「『きけわだつみのこゑ』の戰後史」を讀【読】んで

『きけわだつみのこえ』の戦後史

文藝春秋
保阪 正康

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面白かつたは面白かつたんだが、正直言つて愉快な内容ではなかつた。「きけわだつみのこゑ」に涙した事のある身としては、遣り切れないと云ふか「ふざけるな」と云ふか「騙された」と云ふ感想に加へ、腑に落ちた部分も無きにしもあらず。件の訴訟の經緯も分かつたし。
所詮人は時代から自由に成る事など出來ない、と云ふことを改めて感じた。

編者の檢閲がかかつてゐた件に就いて

GHQに占領されてゐた時代は仕方ないにしても、其れ以降も編者のイデオロギーで採用不採用加筆削除がなされてゐたとは、實【実】に殘念である。
主張したい事があるならば編者が自らの名前を出して本でも出せばいいだらうに、遺書を捻ぢ曲げておいてそのネームバリューは利用させて貰ふとは、死者に對【対】する冒涜ではないか。此の本の内容の通りならば、「日本戰沒學【戦没学】生記念會【会】」と名乘るのも痴がましい氣がする。
「きけわだつみのこゑ」の全てを否定はしないが、讀【読】んで何を思ひ、考へるかは讀【読】者にまかせるべきだ。材料を出來るだけ其のまま提供するのが、編者の役目だらう。

さう云ふ點【点】では、靖國神社發【発】行の「英靈【霊】の言乃葉」の方が私には魅力的だな。何を展示し何を採用するかに關【関】しては、其の人間の思想が絡んでゐるかもしれないが、遊就館では直筆の遺書が展示してあるから、加筆削除は流石に出來ないだらうからね。でも、「英靈【霊】の言乃葉」は、數册【数冊】に纏(まと)めて欲しいと思はない事もない。何で薄いのをたくさん出すのだらう。

サヨク風味な日本戰沒學【戦没学】生記念會【会】の主張

團體【団体】名の割に、主義主張が最近ネットで色々と突つ込まれてゐる所謂「サヨク」(左翼ではないよ)なのはどうよ。私とて近現代史を勉強し始めた許りだが、「戰爭反對【戦争反対】・守れ平和憲法」と唱へれば「他國が日本の事情を考慮して、宣戰布告をしないでくれる」とは思へない。日本が國として當【当】然の權利である所の交戰權を抛【放】棄しても、他國に宣戰布告されれば參戰せざるを得ないし。征服されたいのなら別だが。

日本と戰爭しても勝算がある・メリットもあるのなら、何だかんだ理由をつけて攻めてくるだらう。ハル・ノートを突きつけたアメリカや、チベットや東トルキスタンを侵掠【略】した支那のやうに。
ああ云ふのを見ると、いざと云ふ時に其の國を守つて呉れるのは國連ではなく、其の國自身の國力だと思ふね。國連の常任理事國が侵掠【略】國なんだもんなあ。經濟大國にして軍事大國の日本萬歳。

日本が轉【転】がるやうに戰爭へ向かつていつた理由も、「日帝の野心><」などと云ふ單純な理由ではなく、當【当】時の世界情勢や常識、國々の私利私欲が複雜に絡んだ果てに…と云ふこと位は分かる。「ハル・ノートを突きつけられた状態で、戰爭を囘【回】避する事は果たして出来たか?」と云ふ假【仮】定に對【対】する答へを、私はまだ見つける事が出來てゐない。

腑に落ちた事

事情を知ると、成程と思ふことがある。讀【読】んだ時、當【当】時の日本に對【対】して批判的な學生が多かつた事に正直違和感があつた。
其の時代にゐる人間が其の時代に距離を置いて見ると云ふのは中々難しい筈だし、「日本軍は人間性に缺【欠】けた殘虐な組織><」と云はれてゐた事と、前線に立つてゐる兵士の思考の柔軟な事が結びつかなかつたのだ。
其の時は今よりもメディアテラシーがなかつたし、自虐史觀【観】眞つ盛りだつたから、若い身空で其れが出來ると云ふとは稀有な人達だなあ、そんな稀な人材を犬死させる當【当】時の日本は酷いな、で終はらせて仕舞つたけど。

また、「昔の學生はどうも何を言ひたいのか分かりにくい文章を書くね」と思つてゐたが、其れも省略されてゐた所爲だつたのだらう(『…』が間に入つてゐたし)。其の時は省略されてゐる事に對【対】し、矢張り深くは考へなかつたけど。

記入時刻
2006年05月12日18時18分27秒
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