「ヴィオラ山羊はヴァイオリン羊の星をみる・2/2」金色のコルダ2二次小説
※「金色のコルダ2」と「二次」が分からない人には意味不明小説
※ネタばれ注意
※加地と主人公の話だが、時期が時期だけに友情話という段階
※台詞に恥ずかしいものがあってもそういう仕様なのです
「どうしたの、日野さん」
「加地君は自分のヴィオラの音が嫌いなの?」
「勿論好きだよ。ヴィオラは僕の大切な相棒だ。これは心の底から言える」
加地は間髪途切れず答えるも、だけど、と口を噤み、それから言葉を捜すように空を見上げた。香穂子もつられて空を見る。沈みゆく太陽の朱色と生まれたての夜の青紫色が交わる中、一番星が輝いていた。
「華やかな曲も悲しい曲も嫌いじゃない。でも、僕は音楽に喜びも悲しみも超越した清らかで尊い存在であって欲しいと、僕のような凡人で俗人がどう足掻いても絶対に手の届かない、そんな存在であって欲しいと願っている気がする」
空の星のようにどんなに恋焦がれて触れることさえ叶わない、音楽はそんな存在であって欲しいと加地は言うのだった。
「それでいいの?」
香穂子が問うと、彼は黙ってうなづいた。加地は音楽に対する理想がとてつもなく高いのだな、と香穂子は感じた。幸か不幸か彼には類まれなる聴覚があって、それをさらに加速させている。
しかし、それでは音楽は許された者にしか許されないものに成り果ててしまうではないか。
(リリや創立者の願いとは正反対だ)
彼らは音楽のもたらす喜びと豊かな果実を誰もが味わえるようにと、そんな理念と願いの下に星奏学院を創立した。加地のように、音楽を崇めるあまりに音楽と自らの間に壁を作るような悲しみをこの学院は望んでいない筈だ。
「加地君が星奏学院に来たのは、音楽の神様に導かれたからというのもあるかもしれないね」
「音楽の神様?」
「音楽の神様はもっと色んな角度から音楽を楽しんで欲しいって、望んでいるんじゃないかな」
加地は流石に怪訝そうな表情を浮かべた。香穂子はやや挑戦的に加地を見返す。
「おかしなことを言っているって思ってる?」
「いや、ちょっとびっくりしただけ。妖精のいる学院だって現にあるんだから、音楽の神様だっていてもおかしくないと思うよ」
加地の反応が至極真面目だったので、香穂子は逆に気恥ずかしくなった。
「無理に話を合わせなくていいからね。音楽の神様だなんてちょっと恥ずかしいことを言っているって自覚がないわけじゃないから」
「無理に話を合わせていないよ。僕の好きな音楽の、その神様が僕のことを案じてくれているなんて何て素敵なことだろう。それ以上に、そんな音楽の神様が君を御使いに選んでくれたことや、そういうことを君が思ってくれていたってことが本当に嬉しい。有難う」
香穂子の言葉は香穂子が思っている以上に、加地の心に力を与えたようだった。加地は正門の中、その中心にある妖精像を見る。
「創立祭当日は僕もメンバーも観客もリリも音楽の神様もみんなが楽しくなるような、そんな演奏が出来るといいな」
「きっと出来るよ」
その時、妖精像がきらりと光を放った気がした。加地も周りの生徒達もその光が見えていないようだったけれど、それは一番星と同じ輝きに見えた。創立祭はきっと大喝采で終わり、一番星の光のような喜びを誰の胸にも灯してくれるのではないか。そんな予感が香穂子を包み込んだのだった。
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