剣を縛るは五常の徳
今週も副館長先生は御不在で、代はりに館長先生や、普段は餘【余】り會【会】ふ機會【会】のない師範が指導された。館長先生がお手本を示されたり、お話されることがいつもより多かつたやうに思ふ。
ただ、館長先生のお話は面白いが長くて…。正坐で聞くのが禮【礼】儀なので限界まで我慢するとは言へ、長時間正坐した後、足が「( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \」と笑つてゐる間はもうね。辛いね。皆が動けないでゐると、館長先生が「俺も正坐が辛かつたよハハハ」とおつしやられたのが個人的にはヒット。
三舉【挙】動に成つてゐるのかどうか
先週に引き續【続】き、素振りや竹刀で打つ練習をした。「焦らず落ち着いて打つやうに」と助言を戴いたが、矢張り打つのは難しい。面を打つて小手を打つて胴を打つてフィニッシュ☆と成ると、「自分のやつてゐるこれつて、三舉【挙】動なの???」と疑問。胴の打ち方が、分かるやうな分からないやうな。
途切れぬ組太刀
人數【数】が餘【余】り多くないこともあつてか、組太刀は殆ど休む間もなくやることに成り、正眼に構へて緊張感を保ち續【続】けることは、精神的にも肉體【体】的にも意外にきついものがあつた。一人なら「疲れたから休憩しよつと」が出來るのだが、相手がゐる以上は相手が構へたのならこちらも応じなければならないからだ。
氣を合はせることが出來てゐなかつたし、細かい部分などは最初に言はれても結構忘れてゐるものだと痛感。聲【声】の大きさも、喉だけでは限界がある。聲【声】樂で高音のファの#やラを出す時の要領で出せばいいのだらうけど、打ちながらそれは中々難しいね。三本目が練習出來なかつたのは殘念。
道のある劍と、道なき銃
三本目をまだ覺えてゐないので、昇級審査は見送り。
昇級審査の後、館長先生が劍と五常の徳、即ち仁義禮【礼】智信について話をされた。劍に秀でれば秀でる程、その者は仁義禮【礼】智信についても秀でなければならず、そして劍自體【体】にも仁義禮【礼】智信があると言ふ。この話を聞いて、前よりも活人劍の意味が分かつたやうな氣がする。
劍術を習つて感じることだが、禮【礼】法が結構重要な位置を占める。心も技も美しく振る舞ふことが劍者には妙に要求される。しつこいくらゐ要求される。それは所謂「理想」かもしれない。幕末など混亂【乱】の中ではそれも霧散するのか、劍者による血腥い事件や殺人は幾度なく起こつてゐる。
だが、それが儚い鎖だとしても劍が強力な武器であるが故に、劍を扱ふ者は自らその理想に縛られなければならない。腕も精神も未熟な者が扱へば、その者だけでなく周りの者を傷つける可能性が高くなる。強力な武器を持ち、殺傷能力も高い者が精神的にも優れた者でなければ危なくてしやうがないし、社會【会】も成り立たない。
武士に儒教が必須だつたのはかう云ふ意味もあつたのだらうか。武士には「切り捨て御免」のイメージがあるが、實【実】際は拔いたら「格好惡い」とか咎められるとか云ふこともあつて、さうさう拔かなかつたらしい。江戸時代が長かつたのも、武器を持つた武士にかう云ふ縛りがあつた所爲かもしれない。そこには長所も短所もあつたけれども。
劍と正反對【対】なのが、銃だらう。銃には禮【礼】法と云ふものがなく、また劍のやうに修煉も必要ない。トリガーを引くだけで、子供でも誰でも簡單に人を殺すことが出來る。縛りがない分、慥【確】かに銃は劍よりも強い。だが、縛りのない武器はどこまで行つても人を殺傷するだけの道具に過ぎない。劍は己を磨き、自身と他者を守る道に通じるけれど、銃はどうだらう。銃には道があるのだらうか。
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