「あやつられた龍馬―明治維新と英国諜報部、そしてフリーメーソン」を読んで

あやつられた龍馬―明治維新と英国諜報部、そしてフリーメーソン

祥伝社
加治 将一

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坂本龍馬の年表が載つてゐる本を探してゐた過程で見つけ、内容の斬新さに衝動的に買つてしまつた。從來の坂本龍馬像や幕末の状況を一變【変】させる本であるが、今まで幕末關係で見聞きしてどうも腑に落ちなかつた箇所がこの本では重點【点】的に説明されてをり、その點【点】では奇妙なほど説得力がある。

味方に殺された龍馬

龍馬を殺した前後の状況や犯人については、豫【予】想外だが納得してしまつた。出囘つてゐるどの通説よりもリアリティがある。命を狙はれてゐる癖に刀を手元に置かずに刀掛けに置いておいた、斬られるまで無防備だつたと云ふ設定がどうも理解出來なかつたのだが!

ただ、さうなるとかなり陰慘な話になるのが怖い。味方に肅正されたどころか味方に拷問ないしリンチ死の可能性もあるなんて…。しかも、それを元敵の所爲にして、何人も冤罪で處【処】刑して目をそらさせるとは、よほど後ろ暗いものがあつたやうな感じではないか。

また、一介の下級武士に幕府や藩の上層部が妙に及び腰なのも今一つ分からなかつたが、背後に潤澤【沢】な最新の武器と金を持つた英國政府の囘【回】し者もしくは革命を目論む祕密結社がゐたとすれば當【当】然だし、その背後にゐる者が彼らに力を貸したと云ふ理由もさう考へると納得。

MMRみたい

とは云へ、
「フランス革命、アメリカ革命、そして明治維新。世界の革命の背後には祕密結社がゐるんだよ!」
「ΩΩΩな、なんだつてー!!」
「それは本當【当】なのか、キバヤシ!」
「ああ。その祕密結社の名前はフリーメーソン…」
ひとつの祕密結社の手の中で踊らされた日本、そして世界と云ふ落ちは腹が立つし、正直受け入れ難い。世界はそんなに單純な成分で構成されてゐる物なのか。

作者の江戸時代觀

さらに、硬直化した武家社會【会】、武士に虐げられて貧しく飢ゑた庶民と云ふ悲慘な江戸時代像に對【対】し、「自由・平等・博愛」を掲げて日本に颯爽と革命を起こすフリーメーソン像と云ふ作者の見方には首を傾げるものがある。
釋迦に説法だらうが、江戸時代全般に花開いた豐かな文化、それには武士も庶民も混じり合つて成立させてゐた。結構痛烈な體【体】制批判の瓦版や諷刺歌なども現在多く殘つてゐるし、作者の言ふやうな社會(北朝鮮や中國みたいだな)ならば、そんなこともなかつたのではないか。切り捨て御免も建て前で、實【実】際は殆どなかつたと聞くし。

作者はフリーメーソンに心醉してゐるせいか、多分にフリーメーソンマンセー調である(絶對會員【絶対会員】だらうな…まあ、好奇心も智識欲も旺盛な人なら、無視することは出來ないだらうね。書いてある通りの素敵組織ならば尚更)。
しかし、「自由・平等・博愛」の精神をもたらすため討幕したというのはやはり建て前で、メインは商売の邪魔となるから、ないし意に従わぬから討幕したといふのが本音だらう。そもそも、フリーメーソンの掲げる「自由・平等・博愛」とやらは萬【万】人に適用される物ではなからうに。

ひよつとして榎本武揚も…

フリーメーソンのメンバーだつたのかなとふと思つたり(『石の扉』に書いてあるか?)。
榎本が幕府の船を攫つていくのを見逃したらしい勝海舟がメンバーであり、海軍は傳【伝】統的にフリーメーソンに成りやすいとのこと、また最後まで新政府に逆らつてゐた癖に早々新政府の役職に就けた彼の經歴などを見ると、有り得ないことではない。若しかすると榎本は蝦夷に獨【独】立國を築く氣はさらさらなく、好戰的な江戸幕府の殘黨【党】を遠い北に連れて行つて一掃させるのが目的だつたのかもしれない。大江・開陽・神速など軍艦の坐礁が異樣に多いし…。
ま、不運なだけだつたのかもしれないし、分かりませんけどね。

記入時刻
2006年09月05日00時23分23秒
カテゴリー
◎新選組・幕末
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